思い出売ってコメダでお食事

10代の頃から集めて大切にしていたCDのほとんどを売ってしまった。段ボールに詰めたCDをガラガラに乗せて電車に乗り、新宿のディスクユニオンで売却した。査定に3時間くらいかかって、その間コメダ珈琲でコーヒーと馬鹿でかいハンバーガーを食べた。

売ってしまったCD1枚1枚に「どうしても欲しくて買った」瞬間があったわけで、当時同じ音楽を聴きながら過ごした人や行った場所、思い出も一緒に売っているような後ろめたい気分で、買取カウンターに段ボールを乗せた時、CDたちと目も合わせられなかった。

CDは5万円くらいで売れることがわかった。30枚ほどには値がつかないというので、その中から本当は売りたくないものをサルベージした。私にとっては胸を締め付けられるような思い出の詰まったBECKのCDはタダでも売れないらしく、mellow goldやodelayが運命的にまた私のもとに戻ってきた。

査定の詳細が書かれた紙を見て、思わず高額のものに目がいってしまった。廃盤になっているPUNPEEのCDや初回限定版の星野源は7000円前後。一番安くて20円と査定されたものはMERCURY REVやYETII、レッチリやジョンのソロアルバムなど...。私は買取カウンターで査定用紙を食い入るように見ながら高いアルバム安いアルバムを見極めた。そして、ふと自分のあさましさが恥ずかしくなった。

そそくさとお金をもらって寒さに震えながら家に帰った。帰り道、絶対に売ってはいけないものを売ってしまったのではないだろうかという気持ちになった。ストリーミングで音楽を聴いている今、CDではもう聴かないのに、急に手放してはいけないものだったという感覚に襲われた。コメダ珈琲で食べた巨大なハンバーガーを、私は素敵な音楽の思い出と引き換えに手に入れたのではないかと思えてきた。その後コンビニでお菓子を買った時も、星野源やPUNPEEが私との手切れ金として奢っているように思えてしまった。

でも仕方ないんだ。引っ越し先には場所がないんだ。仕方ないんだ。そうやってCDを売った日からずっと考えている。